環境エピゲノミクス研究会
「環境エピゲノミクス研究会(EEG)の再開について
環境エピゲノミクス研究会(EEG)は、2008年に発足し、5年間に10回の定例会を開催後、自然休会となり、幹事の皆様の任務も終了しました。この度、休会中の「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」を再開いたします。今後、会員を再度募集し、新しい幹事を選出後、活動を再開いたします。
その契機は、農薬Roundupがラットに、「Epigenetic Transgenerational Inheritance(ETI) : エピジェネティック継世代遺伝」を誘発したことが報告されたことにあります。これまで遺伝学・発生学では、哺乳類の生殖細胞ではその配偶子形成過程で、すべての「細胞記憶」は消去されるものと考えられてきました。「ETI」は、これまでの毒性物質には認められてこなかった、まったく新規の毒性事象です。このことは、これまでのように、「がん」や生活習慣病などの疾病の原因を体細胞だけで求めるのではなく、生殖細胞のエピジェネティックな異常を含めて捉えなおす必要があるものと考えられます。
さらに、既知の変異原物質の中にも「エピジェネティック活性」が続々と報告されつつあります。今後、多くの化学物質、とくに環境ホルモン作用を示すものに関して解析し、その結果を総合的に考察することで、化学物質による「発がん性」をはじめとする、さまざまな毒性作用機序の解明も可能になるものと考えられます。これは「毒性学におけるパラダイムシフト」となりえます。
また、「エピジェネティク変異原物質」の中には、DNAやヒストンの修飾などの「エピジェネティック変異」を正常に復帰できる化学物質も知られており、それらを医薬品として利用できる可能性もあります。それらを検索して、有効利用するなど、「環境エピジェネティクス」は将来新しい大きな展開も期待できます。
しかし、「エピジェネティクス」は、生物学・医学における新しい研究分野であり、特に環境科学である「環境エピジェネティクス研究」にはまだ研究者も少なく、多くの研究者、特に若い方々が「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」に参加され、この新しい研究分野を切り開かれてゆくことを切望いたします。なお「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」は、これまでどうりに日本環境変異原学会(JEMS)の会員を中心に活動をしてゆきますが、幅広い学会横断的組織としての活動もまた行う予定です。会の活動内容については、ホームページ http://eegs.web.fc2.com/を是非ご覧ください。
2021年1月12日
「環境エピゲノミクス研究会」再開発起人 澁谷 徹