平成23年度公開シンポジウム 「がんを制御する-突然変異研究を取り巻く新しい潮流」

 がんの発生は多段階的であり、多種多様な因子によって支配されている。その要因はさまざまであるが、基本的にはDNAを損傷して変異を生じる因子、そして現実的にはゲノムDNAを取り囲む環境要因が重要となる。近年の多角的な解析により、突然変異を引き起こすその分子機構および発がんに至る道筋が一段と明らかになってきた。それらは当然のことながら、新しい示唆と変化に富んでいる。
 例えば、変異原により生じるDNA損傷とDNAポリメラーゼを考えてみよう。これは突然変異を引き起こす基本的な反応といえる。10年前まで我々は損傷を正確に乗り越えるDNAポリメラーゼの存在を知らなかった。しかし今や突然変異を考えたとき、このポリメラーゼの生物学的意義そして環境変異原学に対する貢献は大きい。なぜならこの酵素がDNA損傷と発がんを結ぶ一つの鍵となっていたからだ。次の10年を考える上で、環境変異原が生じるDNA損傷とその損傷が導く生物学的反応は次のパラダイムに向かうだろう。今新たに立ち向かう道を定め、足下を確認することは重要であると思う。
 本シンポジウム「がんを制御するー突然変異研究を取り巻く新しい潮流」では、7名の先生方のご講演をとおし、環境要因が突然変異を生じる仕組みおよび発がんに至る道筋を辿りたいと思う。
  世話人: 倉岡功(大阪大学)
       伊吹裕子(静岡県立大学)
       鳴海一成(原子力研究開発機構)

※シンポジウムのポスターはこちら(pdf)

日 時:2011年5月28日(土)10:00~17:10
場 所:慶應義塾大学 芝共立キャンパス
           東京都港区芝公園1-5-30  アクセスはこちら
参加費:無料
    ※事前申し込みは不要です。当日、会場へ直接お越しください。
問い合わせ:公開シンポジウム世話人 倉岡功 kuraoka(at)chem.es.osaka-u.ac.jp
      日本環境変異原学会企画担当理事 布柴達男 nunoshiba(at)icu.ac.jp
            ※(at)は@に変えてください。
協 賛:慶應義塾大学薬学部

プログラム:

「環境変異原によって誘発される突然変異:トランスリージョンDNAポリメラーゼの役割」
能美健彦(国立医薬品食品衛生研究所)
「大気汚染多環芳香族化合物による突然変異生成の分子メカニズム
  ~DNA損傷の構造と突然変異~」
川西優喜(大阪府立大学産学官連携機構)
「XPV責任遺伝子産物Poletaを制御するメカニズム」
益谷央豪(名古屋大学大学院)
「突然変異誘発経路の制御機構-PCNAのユビキチン修飾の生化学的解析から-」
増田雄司(広島大学原爆放射線医科学研究所)
「出芽酵母と分裂酵母における突然変異制御の研究
  -DNA損傷バイパスのタイミングとその制御-」
大学保一(Genome Damage and Stability Centre,サセックス大学)
「分子シャペロンHsp90による複製ストレス応答の制御」
山下孝之(群馬大学生体調節研究所)
「ヒトがんゲノム変異:大規模ゲノム解析がもたらす環境変異原研究と治療へのインパクト」
河野隆志(国立がん研究センター)