日本環境変異原学会

放射線リスクWG作成

 

 

コラム

 ここでは、今回の大震災および原子力発電所の事故を受けて、日本環境変異原学会会員からのコメント、情報提供をコラムという形で提供させていただくことにしました。よって、ここに掲載された内容は会員個人の意見に基づくものであり、日本環境変異原学会としての意見ではないことをご了解の上、お読みください。(あわせて、学会員の皆様からの積極的な情報提供をお願いします。)

  • その3  我々はすでに結構被爆していた(核実験編) (鈴木孝昌) 
       カリウム40による自然暴露の問題と同様、今回の原発事故を受け、放射線に関する基礎知識を勉強してみて初めてわかった驚くべき事実として、50年代から60年代にかけての核実験による環境放射能汚染の深刻さがある。核実験の数はこれまでに、なんと2400回を越え、それによって放出された放射性物質の量はかなりなものであった。
       放射線影響学会のQ&Aによれば、当時は現在の1000倍から10000倍の放射性物質の降下があり、原発事故以前の平常値として、年間平方メートルあたりおおよそ0.02〜0.2ベクレルに対し、200〜2000ベクレルと高かった。量的な換算は難しいところであるが、単純に平時の1000倍量の汚染レベルであったと考えると、6月現在福島にて測定されている環境中の空間放射能量はそれを下回ってきている。(土壌の汚染に関しては、まだかなり量が高く注意が必要な用であるが)
       私自身1962年生まれであり、放射線に対する感受性が高いとされる幼少期を、まさにこの環境放射能の高い時代に過ごしてきたというのは、驚愕の事実である。おそらく、同年代の人たちも、そんなことを意識することは、これまでになかったと思われる。今回の事故で、初めてその事実を知ることになったわけである。幸い、まだ癌にはなっていなし、我々の年代に癌が増加しているというデータもないようであるが、今後きちんとした検証が必要かもしれない。
       いずれにしても、今後の、福島原発事故での環境放射能の影響を考える際には、60年代に幼少期を過ごした世代の暴露量との比較、およびその健康影響の評価が重要だと思われる。不幸にして実験台になってしまった我々への影響が、今回の事故のリスクを考える上で有益な情報を与えられれば幸いである。

      (参考情報)
    • 日本の環境放射能と放射線
    • 日本放射線影響学会 Q&A29